2010年11月28日日曜日

ラ・ヴィスタゴルフリゾート=千葉県で味わえる南欧リゾート。コースはお遊び気分では攻略できない本格派

 「いつの日か海外のリゾート地に出かけ、ゴルフ漬けの日々を過ごしてみたい」――。そんな熱い思いを抱いているゴルフ愛好家も多いに違いない。こ の「ラ・ヴィスタゴルフリゾート」は房総半島のほぼ中央にあって都心に比較的近く、長期休暇をとらなくても週末、手軽にリゾートゴルフが楽しめるという。
 そこで早速、11月の日曜日のプレーを予約。後日、前泊できそうな仲間を集めて併設する「ホテル ラ・ヴィスタ」に電話すると、「もう土曜日は満室です」。「えっ!」と絶句。やむなく今回は宿泊を断念し、ゴルフプレーに専念することにした。

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(ゴルフと一緒に、南欧のリゾート気分を楽しめるのが魅力)

 当日は朝早起きして、東京駅からJRの特急電車「わかしお1号(安房鴨川行)」に乗車、目的地である茂原駅(外房線)に向かう。所要時間は約1時間。「意外に時間距離は近い」と感じる。
 駅南口にあるスーパー「ジャスコ」裏の駐車場に行くと、周辺のゴルフ場から集まったクラブバスがズラリ。「ラ・ヴィスタ」の名前を探すのにひと苦労するほどの賑わいだ。
 「この駐車場は周辺ゴルファーの間では大型発着場として有名なんですよ」と今回同伴してくれた知人がニコニコしながら教えてくれた。
 平凡な町並みと山村風景の中を走ること約20分。右前方に突然、“異空間”が出現した。「パームツリーに彩られた、リゾート感溢れるパブリックコース」とホームページ(HP)に書いてあったが、まさにその通り。別世界だ。

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(表から見たクラブハウス。最初は異国情緒にびっくりする)

 アースカラーで統一したユニークな建物。「地中海リゾートをイメージした」というだけあって、南欧ムードはクラブハウス周辺にも漂う。高く伸びたパームツリー(やしの木)、太いソテツ、綺麗なホテル・・・。ここが千葉県とはとても思えない不思議な光景である。
 男性スタッフの出迎えを受けながら、送迎バスを降りる。クラブハウスの中はどうなっているのだろう。ワクワクしながらロビーに足を踏み入れる。正面に螺旋状の下り階段。右奥にレストラン。左手前が受付。
 静かな環境音楽が流れ、内装に南欧風のデザインが施されて入るものの、外観ほどの圧倒的リゾート感はない。
 受付は意外にコンパクトで控え目。提携している「太平洋クラブ」の新規会員募集の案内板やパンフレット類も多く、中の雰囲気は他のゴルフ場とそう変わらない。
 
 受付隣に「自動精算機」が2台並び、レンタル用「GPSゴルフナビゲーション」端末機(530円)も置かれるなど、「日常の世界」に直結した小道具も目立つ。

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(螺旋階段の周りには様々な関連商品が並んでいた)

 中央の螺旋階段を降りると、下はもっと現実的だった。さほど広くないスペースにゴルフ関連商品がぎっしりと並び、飲料用の自動販売機が設置され、窓際には椅子とテーブルを1つ置いただけの簡素な「宅配便受付」コーナーが準備されていた。

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(ロッカールームに向かう通路。壁の写真が高級感を醸し出す)

 リゾート感覚を呼び戻してくれたのはロッカールームだった。通路の壁には美しいコース写真が展示され、ロッカー自体も幅広で使いやすく、高級感があった。

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(池、それともプール? 南欧リゾート風の演出が随所に)

 最も感動したのは、スターティングテラスから眺めた景観だった。「地中海リゾート」のイメージ通りで、思わず「おぉ~良いじゃない」と声を出してしまった。

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(パッティング練習場側から見たクラブハウス)

 大小2面あるパター練習場の緑がまぶしく光る。その脇にプールと高いパームツリー。裏側から見たクラブハウスもなかなかのものだ。宿泊はできなかったが、リゾート気分には十分浸れる。

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(ドライビングレンジ。距離は十分だが幅はさほどでもない)

 「今日はゴルフに来たんだ」と気を引き締め、まず向かったのは「ドライビングレンジ」。クラブハウスからちょっと離れた場所にあるが、距離は十分にあり、「50」ヤードの看板などアプローチ練習を意識させる工夫もなされている。
 ボールは縦に線の入った練習場専用のもので、多くが中古品。価格は25球で300円。ドライバーの練習用に「高め」のティを探したがない。平均的な高さのティばかりで打ちにくく、早々に切り上げた。
 細かいことだが、好きなティの高さには個人差があるので、「高め」「低め」といろいろなタイプを用意してもらえると有り難い。
 プレースタイルはリゾートっぽく「乗用カート利用のセルフプレー」のみ。乗用カートの中にはコースガイドやピンの位置を示すグリーン案内図が用意されていたが、特に詳しいと言うほどの内容ではなかった。
 
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(コース途中にある売店も同じデザインで統一されていた)
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(店の内部。以前、スタッフが働いていた様子が感じられる)

 「コースにある売店は無人。自販機しかないので、小銭を用意しておいた方が良いですよ」と同伴者にアドバイスをもらう。
 この日はOUTコース1番ミドルホールからのスタート。行ってみるとクラブハウス周辺にあった南欧風のムードはすっかり消え、ごく普通の日本的丘陵コースが広がる。
 
 250ヤードほど先に1打目の狙い場所となる「吹き流し」があるくらいで、平凡なレイアウト。景観的には拍子抜けした。

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(レギュラーティは「白」ではなく「青」マークから)

 ティインググランドは4つほどあって、レディースティはかなり前。フェアウエーは平坦で、距離も314 ヤード(レギュラーティ)しかない。「やっぱりリゾートゴルフ場。カップルで楽しめるよう易しく設計されているんだな」と思った。
 2番ロングホール。緩やかに左にカーブしている2打目地点に立って、第一印象が間違いではないかと思い始めた。
 左右2段に分かれたフェアウエー。真ん中に打つと、ちょうど傾斜地になっていて3打目が打ちにくい。しかも、かなり打ち上げの砲台グリーン。距離も546ヤード(同)とたっぷり。苦戦する。

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(3番ホール。パームツリーがあるだけで、印象がだいぶ違う)

 「これは手強いコースかもしれないぞ」と考え直して向かった3番ホール。今度は一転してリゾート感覚にあふれた池越えのショートホールだ。細いパームツリーの葉が風に揺れ、実に美しい。思わず何枚も写真を撮ってしまった。
 同様のリゾートコースがこの先も続くのかと期待したら、4番ホールは再び普通の丘陵コースに逆戻り。ティインググランド周辺には竹林があり、むしろ和風の趣だ。

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(大きく印象的なバンカー。右上にプレーヤーが小さく見える)
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(6番のショートホールはマウンドだらけ)

 その後も、大きな丸いバンカーが強烈な印象を残す5番ホール、小さなマウンドが連続し、スコットランドのゴルフ場を連想させる6番ホール、S字に 曲がった距離の長い7番ホール、グリーン右手前の谷が曲者の8番ホール、クラブハウスの借景が見事な9番ホールと、個性的なホールが続く。
 それぞれのホールが異なった顔を持ち、変化に富んでいてプレーヤーを飽きさせないのは、このコースの大きな特徴である。

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(山を削り取ってコースを造成したと思われる所も)

 山を削り、無理して造成したのではないかと思わせる個所がないわけではないが、ここはそうした疑問より戦略性、面白さの方に軍配を上げたい。

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(14番の名物ホール。美しく、難しい)

 一番美しく、印象に残ったホールは午後に回った14番ホールだった。クラブハウスの近くにティインググランドがあり、建物の美しさに見とれていたら、同伴者が「このホールは難しいですよ」と警告する。
 第2打地点に行って、警告の意味が分かった。左サイドに大きな池があり、その池に沿ってフェアウエーが左にカーブ。グリーンを狙うには池越えの会心ショットを放たないといけない設計になっているのだ。
 HPやパンフレットにこの14番ホールの写真が大きく載っているので、改めて見ていただきたい。「ラ・ヴィスタ」の顔として人工的演出を尽くした“看板ホール”である。
 ここはグリーンも難しかった。グリーンコンディションは「3.5mmカット、9フィート」に設定されているが、傾斜がきつく、グリーン奥に乗ったボールは加速してカップを大きくオーバー。それを見た同伴者は、今度は打ち切れずにショート。
 INコースでは2段グリーンも数ヶ所あり、パットの巧拙がそのままスコア差に繋がりやすいゴルフ場だと実感した。たまたまパットが好調だった同伴者は『ゴルフはパットだ。パットは勇気だ!』と得意げだったが・・・。
 ラウンド中は風にも悩まされた。「九十九里海岸からの海風なんでしょうね」と仲間同士で話し合っていたら、クルマでコース内を巡回していた男性スタッフが「普段、風はあまり吹かないのですけどね」と申し訳なさそうに呟いた。
 
 「冬でも暖かいんですか」と尋ねたら、「館山や千倉方面は暖かいですが、ここはちょっと内陸に入っているので、東京と同じくらいでしょうか」という。正直な人だ。

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(15番ショートホール。手前は谷、バンカーも多く、視覚的プレッシャーがある)

 HPのコースレイアウト図を見た時、池の多さに驚いたが、実際にラウンドしてみると、明らかな池越えは3番、14番、15番くらいで、他の池はコースサイドやホール間に配置されていて、心配したほどは気にならなかった。
 予想外だったのはワングリーンの大きさ。とにかく広い。ファーストパットの距離感を間違えると3パットの罰が待っている。繰り返しになるが、パットの出来不出来がスコアを大きく左右するコースである。
 グリーン上にピッチマークが多いのはグリーンが比較的軟らかいためだろう。気になったマークは極力直しながらラウンドしたが、プレーヤーにはマナー厳守を望みたい。
 特に「ラ・ヴィスタGR」のようにセルフプレーのみのゴルフ場は、バンカー均しなど基本的マナーをもっと利用者に訴え、実行させる努力が必要だと感じた。

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(紅葉真っ盛り。赤や黄色の葉が目を楽しませてくれた)
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(コースの所々にこんな「壁」がある。意味不明)

 ちょっと横道にそれたが、コース内のメンテナンスはまずまず。11月という季節柄、芝が枯れ始めていたが、これはしょうがない。むしろ他のコースに比べれば良好といえる状態だった。
 全体としてみると、コースは要所でリゾート的演出が施されながらも、思った以上に本格的、戦略的なものだった。
 チャンピオンティから6,990ヤード(コースレート72.5)、バックティからは6,532ヤード(同70.3)、レギュラーティからでも6,248ヤード(同69・3)。
 「遊び気分では好スコアが望めないコース」というのが実際にプレーしてみての感想である。

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(レストランから眺めた外の様子。よく見ると和洋混在で微妙な景観)
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(レストラン内部。昼食は1,500円程度のメニューが多かった)

 クラブハウスに戻る。レストランの内部は写真で見ていただいた通り。思ったよりは狭かったが、明るく、内装にもリゾート的雰囲気が漂う。外の景色も美しい。
 レストランを出た右側にラウンジ風の丸い特別コーナーがあり、食事後はここで外の美景を楽しみながら、ゆっくり寛ぐことが出来る。もっとも私たちは昼食時間が40分余りしかなく、素通りしてしまったが。
 また、館内のちょっとした空間に人形などの置き物や絵画があったのは、ゆとりを感じさせて好印象。
 浴室と脱衣場は、どちらかといえば機能的でコンパクトな設計。南国情緒溢れる装飾やデザインの数々を期待していたが、そうした遊び心はあまりない。
 トイレも同様。清潔で備品や機能が整っていれば十分との判断かもしれない。洗面所にはハンドソープとうがい薬が常備されていた。トイレの個室(7つ)内には「プレー料金表」と「太平洋クラブ新規会員募集中」の貼り紙があった。
 「太平洋クラブ」といえば、関連コースのHPはどこも素晴らしい。「3Dムービー」という呼び方で「グラウンドビュー」「スカイビュー」の2通りのコース紹介がなされている。
 各ホールの様子が「地上から」と「空中から」動画で楽しめ、見ているだけでも楽しい。
 開場から既に12年が経過し、建物もピカピカというわけではない。同伴者は「南欧のリゾートに似せて造っただけ」と手厳しかったが、それでも全体のコンセプトが明確で、強烈な印象を残す面白いゴルフ場だった。
 最後に気になるプレー料金について。HPの「料金表」を見ると「平日が12,100円」「土日祝日が21,100円」とある。
 しかし、トップページの「News Topics」で紹介されている「カレンダー料金」では、11月のハイシーズンで「平日が9,500円」「土日祝日が18,000円」。1月からのオフ シーズンでは「平日が9,000円」「土日祝日が15,000円」となっている。カレンダー料金が“実勢価格”ということだろう。
 この料金表を丹念に見ると、毎週月曜日が「サンクスデー」で、松花堂弁当とドリンクが付いて他の平日よりも数百円安い。また同様のサービスが付いた「感謝デー」も時々設けられているなど、集客にきめ細かく知恵を絞っている様子が伺われる。
 「ラ・ヴィスタクラブ」という組織もあり、この会員になれば割安料金でプレーできるなどの特典が付く。
 だが、周辺には低価格を売り物にしたゴルフ場も多い。施設面で差別化できているとはいえ、通常価格だけで比較すると、季節や日によっては割高感も残る。利用する際には「割引プラン」を小まめにチェックし、コストパフォーマンスをより高めたい。
 仲間が集まるならコンペパックも有力な選択肢。3組10人以上という条件はあるが、「秋のコンペパック」の場合、「プラス1,500円で昼食+1ドリンク付」など様々な特典がある。
 「キャンセル料は取らない」し、「賞品プレゼントのサービスもある」というから幹事さんは事前に相談してみるといい。
 このほか、昼食が付いた「ランチパック」、毎月のように開催されている「オープンコンペ」、さらに「バスパック(コンペチャーターバス)」などもあり、営業努力を強く感じる。
 ちなみにゲストの「宿泊パック料金」は平日が18,000円(1泊+1ラウンド+朝食+昼食代込み)、土日祝日が25,000円(同)である。
 最も不満に感じたのは「送迎バス」の本数の少なさ。朝は茂原駅8:20分発のバスを利用したが、実は平日、土日祝日ともこの1本しかない。しかも予約制。
 
 帰りも4:50分発の1本だけだ。乗り遅れればタクシーしかない。片道3,500円ほどかかる。
 最近は「クルマだと(アルコール類が)飲めない」との理由から電車を利用する人が増えている。クルマでの来場が多い“リゾート”とはいえ、再考の余地は十分にありそうだ。

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